麦草岳と濃ヶ池をめぐる山旅

IMG_1060・牙岩
                               麦草岳のシンボル/牙岩

このところの好天続きで、中央アルプス夏山の取材はいっきに進みました。

8月14日~15日は、前回の日記と同様に中央アルプスの西駒ヶ岳へ入山しました。

千畳敷を横目に、続く八丁坂を駆け上がり、稜線に出てそのまま頂上木曽小屋まで直行。
山小屋の管理人・Kさんに、まずはあいさつ。

今宵の宿をお願いし、雨具、衣類など撮影には不要となる荷を預かってもらい、
身軽になって麦草岳を目指した。

午前8時30分、山小屋を出ると、すでに木曽側には雲が覆い尽くしていた。
それでも花を愛でたい一心から迷うことなく歩を進めた。

駒ヶ岳を背に、木曽前岳の鞍部へと下降し、九合目の玉ノ窪からは木曽前岳の東側山腹を
北へとトラバース。

このトラバース道を歩く人は極端に少なく、そのためダケカンバやナナカマドが道を塞いでいた。

ガレ場では浮石が目立ち、急斜面に足元が危ない。

牙岩手前では、登山道の左右が高山の花たちで埋め尽くされていた。

もうすでに秋の花が盛りを迎え、トリカブト、ミヤマアキノキリンソウなどが咲いている。

千畳敷から西駒ヶ岳の山頂付近までの花たちは、今年に限り小ぶりだが、牙岩までの
区間に見られる花は、例年並みの大きさだった。

玉ノ窪カールから吹き上げる風に、多量の水分が含まれることから、植物たちは
たっぷりの水分補給ができ、そのうえ栄養豊かな土壌も手伝って
大型化しているのかもしれない。

事実、降雨でもないのに腰から下が、びっしょりと濡れた。
植物に付着した水気がズボンを濡らすのである。

牙岩は、木曽谷から屹立する鋭いナイフ状の岩峰で、その形が牙に似ていることから
その名がある。

オーバーハングの牙岩を直登することはできず、伊那側を高巻く。

登り越えると大崩落の縁となって、30㌢ほどの狭いナイフリッジの道が50㍍も続いた。

左右がすとんと切れ落ちた最初の橋は、足元が何もない空間を行くのだが、
崩壊寸前の木製の橋は、斜めに傾き危険この上ない。

伊那側の急斜面を下って対岸へ渡ろうと試みたが、結局は断念。
ザイルを持参しなかったことが悔やまれた。

続く主稜は、鞍部まで直角に落ち込むような崖となっていた。
梯子が2本連続し、その間を足元がザレザレの超急斜面が綱いている。

通常なら前向きで駆け下るのだが、この梯子は急すぎて、後ろ向きで
下降せざるを得なかった。

いったん鞍部へ降り、安心したのも束の間、岩壁を木曽側へと回りこむ鎖場に出た。
鎖を頼ることもなく難なくクリアー、ふたたび続く岩峰は伊那側へと高巻いた。

岩峰の先、飛び出た斜面は広大な花園だった。地獄から天国へ出たような
そんな心地よさだった。

私の背を越えるミヤマシシウドの白く大きな花、トリカブトの紫色の花、サラシナショウマの
動物の尻尾のような白い花など、私の胸ほどある茎の高さにびっくり。

少し高いところから鳥瞰するように花園を捉えた。

花たちの頭を霧が次々とかすめ流れ、神秘の光景だった。

その花園を囲むように生息するダケカンバの森は、深いガスが立ち籠めていた。

それから何回も急峻な道を登下降し、ようやく麦草岳の南端に着いた。南峰である。

さらに深いハイマツをかき分け、ようやく麦草岳山頂へ立ったのは午後2時。
あいにくの霧と雲によって、西駒山群は白いベールに包まれていた。

私は持参のむすびとお茶を飲み、往路を引き返し牙岩からは木曽前岳へと主尾根を登った。

この山行では、ルートを塞ぐ樹木や植物に、体やザックが触れるたびに、
頭から全身に小麦粉を浴びたように、細かい虫の大群に襲われた。

最初は花粉かと思ったが、頭を手で払ってみて気づいたのだった。

これほど想像を絶する虫の先例を受けたのは人生初めての経験であり、その被害を少しでも
減らそうと、懸命に腰を屈めて歩いたのも初めてだった…。

頂上木曽小屋では、宿泊者約20名と夕食をいただき、午後8時に就寝。
夜半から凄まじい降雨が屋根を強く叩いた。

翌朝は好天の兆しを感じるものの、高曇りに少々がっかり。
それでも朝食を一番に済ませ、小屋を後にする。

西駒ヶ岳の高点を踏み、山頂からは中央アルプス唯一の氷河湖・濃ヶ池を目指す。

山頂から東へとコースをとり、馬ノ背を通過するころから青空が天空を覆ってくれた。

途中、何箇所か三脚を立て、撮影しながら分岐に出る。

分岐で尾根を分け、右の濃ヶ池へのコースに入る。ダケカンバの緑のトンネルを進み、
濃ヶ池へと降り立ったのは午前7時。

IMG_1175・濃ヶ池
                               中央アルプス唯一の氷河湖・濃ヶ池

湖面は静まり返り、周囲の山々・伊那前岳・宝剣岳・西駒ヶ岳が、鮮やかな緑色の山肌を
写してことのほか美しい。

湖畔に三脚を立て、さまざまな構図を創って撮影を楽しんだ。

濃ヶ池は江戸時代から明治・大正・昭和初期まで、雨乞いの聖地であったという。
その証拠に龍神様が湖畔に奉られている。

濃ヶ池からは南へと山腹を横移動し、黒川源流部を高巻いて駒飼ノ池に到着。

池とは名ばかりで、一筋の流れがあるだけ。しかし広大な平坦地で、休憩するには
打ってつけの場所。

さらに宝剣山荘の分岐へと登り、乗越浄土から千畳敷へと下山した。

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Author:Alps Photo Gallery
たくましく生きる者の姿を。
厳かにして優しい大自然の表情を。
山岳写真家津野祐次と長谷アルプスフォトギャラリーのスタッフが綴る信州伊那市長谷にある、長谷アルプスフォトギャラリーの日記です!

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