ギャラリー便り№14

軽井沢に取材と調査にでかけました


紅葉
軽井沢旧軽井沢・雲場の池/10月30日


2010年10月30日。

俳枕の地・浅間山へは、幾多の文人墨客が山麓を通り、眺めたことでしょう。

有史以来、50数回の大きな噴火を繰り返す浅間山は、巨大な生命体を持つ火の山です。

俳聖・松尾芭蕉は更科紀行の旅で、京を発ち中仙道を北上して木曽の歌枕を巡り、木曽義仲ゆかりの地を訪ね、善光寺参りと、姨捨の名月を堪能して浅間山麓の追分に入り、江戸へ向かいました。

『吹飛ばす石は浅間の野分かな』の俳句を残しています。

芭蕉は、51歳の最期まで妻も子も家族も持たず、ただひたすら文芸に邁進、41歳にして江戸で多くの門人に囲まれ何不自由なく暮らす生活をきっぱりと捨て、自ら乞食となって辺境の地へと漂白の旅を続けました。

人生最大最後の吟行は、「奥の細道」であり、5回にわたる走破距離3800㌔の半分をこの旅に当てています。

五七五というわずか17文字の中に、季語と切れ字を導入するという約束を守りながら、自然界や人生の理屈なき描写と、芭蕉の思想を俳句の背後に託して表現するという、世界最小の詩へと昇華させた人物です。
つまり俳句革命を見事に成し遂げたわけです。

住家を売ってまで、断崖絶壁を強風によろめき歩きながら追い求めた俳諧の道は、奥の細道旅の後、不易流行の哲学を門弟に説いたことからも理解できます。

晩年に入り、俳諧の古今集とまで賞賛された『猿蓑』を刊行、ついに俳諧の一粒は円熟となったのでしょう。

その3年後には「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」の辞世句を遺して、文字通り旅の途上で客死したのです。

芭蕉の死後、22年後に生を受けた与謝蕪村は浅間の句をこのように詠みました。

『浅間山けぶりの中の若葉かな』

蕪村らしい、おおらかで色彩にあふれた文字間の中に、澄み渡る大気の透明感と、広々とした風景が目に浮かびます。

蕪村は、蕉風を伝承しながらも独自の道を切り開いた人物で、絵画的な美の世界に希求しつつ、芭蕉の地位を不動なものに確立した功績が評価されています。

さらに45年後にこの世に生を受けた小林一茶は、浅間山とは縁が深かったらしく
『有明や浅間の霧が膳をはふ』などの句を遺しています。

一茶は、これ以上ない辛い少年期と青年期、さらに不幸が連続する不運の人生境遇を送った人物です。

されど人間や生活、動植物や鳥にまで慈しみの心をもって句を詠んでいます。

一茶の誹風は、芭蕉や蕪村が確立した後の沈滞した俳壇を、ものの見事に復興させました。



私は、浅間山に約300回(500日)取材に入りました。

けれども浅間山を俳枕の地として改めて眺めてみようと思い、訪ねてみました。

大きな自然石に刻まれた追分の芭蕉句碑を見、雲場の池の紅葉を楽しみました。


雲場の池
紅葉彩る雲場の池



目的の軽井沢町立図書館を訪ね、江戸時代における三大俳諧師、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶と浅間山について、その地で詠んだと思われる俳句などに関連する書籍名を尋ねました。

受付の女性と男性スタッフのAさんが、とても親切な対応をしてくださいました。
Aさんは、私のほしい資料となる書籍名などを調べてお知らせくださるというのです。

Aさんには、ご厚情の数々を賜ることができました。


11月1日と2日は、江戸時代における三大俳諧師(仮称)、俳枕・浅間山に関する原稿を執筆しました。

11月3日、4日はプライベートで埼玉県へ出かけました。



11月5日は、再び軽井沢町立図書館をお訪ねすべく、軽井沢に向かいました。

Aさんに直接お会いしてお礼を述べたいと考えたからです。

お世話になったAさんはあいにく留守でしたが、受付の方と、居合わせたスタッフの男性にごあいさつできました。


今回の一連の調査では、Aさんの姿勢から人間同士たとえ初対面でも誠実に向き合うことの重要性、誠の歓迎とは何か、という人間としてもっとも大切なことを、無言で教えてもらいました。

ちなみに私の住む伊那市にある、伊那市立図書館の受付スタッフの方々も、私の相談にあたたかく応じてくださり、必要とする書籍を一緒に探してくれました。

これらの皆様にご高配いただきましたことも付け加えたいと思います。


俳句のイメージ写真と、関連する文字原稿はすでに編集者に入稿を終えました。

明日からは、グラビアページ(浅間山の四季)の写真選定と、浅間山に登るコースガイドの項に必要なフォト選び、さらに文字原稿の執筆に入ります。

三大俳諧師(仮称)の項は、編集やデザインの皆様の入念な編集作業を経て、初校ができてきます。その時点で、さらに文字校正、再校を行って参ります。


『浅間山』は来春には本が出版される予定とのことです。

どうぞお楽しみにお待ちください。

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Author:Alps Photo Gallery
たくましく生きる者の姿を。
厳かにして優しい大自然の表情を。
山岳写真家津野祐次と長谷アルプスフォトギャラリーのスタッフが綴る信州伊那市長谷にある、長谷アルプスフォトギャラリーの日記です!

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